多くの循環器疾患に関連する睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing: SDB)とは、睡眠中に無呼吸・低呼吸(10秒以上の呼吸停止)が1時間に5回以上繰り返される病態をいいます。
その中でも、自覚症状や症候が存在するものは、特に睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)と呼ばれます。
なぜ呼吸がとまってしまうの?
睡眠時に呼吸が止まってしまうことの原因には大きく2つあります。
のどや気道がふさがってしまう
閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)とは上気道(空気の通り道)がふさがることによっておこる無呼吸・低呼吸状態になる症状のことで、最も多いタイプです。
上気道がふさがる原因には、舌が落ち込んでしまったり、のど周りに脂肪がついてしまったりむくんでいることなどでのどの奥が狭くなってしまい、それらが睡眠時に呼吸が止まることを引き起こしています。
わが国では治療の対象となるOSAの85%以上が未診断といわれており、大多数の方はいまだに未治療のまま過ごしているのが現状です。
脳からの指令が止まってしまっている
脳から呼吸をするという指令が出なくなってしまっている中枢性睡眠時無呼吸(Central Sleep Apnea:CSA)は心不全の方に比較的多く認められる無呼吸パターンで、多くの場合はそうした疾患の結果として出現してくると考えられています。
取れない眠気・疲労に注意
寝ている間に起きてしまう病気ですので、ご自身ではなかなかその症状には気づきにくいかと思います。
しかし、起きたときにもその症状があらわれてくるものです。
無呼吸である間は、酸素が脳や体に回っておらず、酸素不足を補おうと、身体は心拍数を大きく上げています。
こんな状態では、本来は休むための睡眠時に、脳にも体にも大きな負担がかかってしまいます。
結果として、起きたときになんだが疲れている、眠気がとれていないといった症状が現れることになるのです。
個人によって感じ方はそれぞれですが、上記のような症状がある場合には、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみることも必要かもしれません。
また、眠っている間のことはなかなかご自身では気づけませんので、可能であればご家族の方などに聞いてみましょう。
こんな人は要注意
睡眠時無呼吸症候群になってしまう人には、生活習慣に問題がある場合が多いです。
呼吸が止まってしまうのは寝ている間ですが、起きているときにこそ気を付けなければいけません。
以下のような方は、注意が必要です。
睡眠中
- いびきをかいている
- 呼吸がとまる、乱れる
- むせることがある
- 何度も目が覚めてしまう
起きたとき
- 口が渇いている
- 頭痛がする
- 眠気が取れない
- 体が重くだるい
体型や病気
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸が疑われる場合は、就寝時の呼吸、脈拍、酸素濃度を計測する簡易モニターを自宅で装着していただきます。
最近では、職業ドライバーの方を中心に健康診断でも簡易検査を取り入れているところが多いようです。
簡易検査の結果でさらなる検査が必要となった場合や健康診断で引っかかったときは、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)という精密検査で評価することになります。
PSGは限られた医療機関で1泊2日の入院で行うことが多いのですが、当院ではご自宅で行うことができる検査機器に対応しています。
いつもの睡眠環境で行うことで、より正確な評価をすることが期待できます。
治療はどんなことをするの?
治療としては、症状の緩和と、原因となる根本の問題を改善することがあります。
生活習慣の改善
首回りの脂肪は気道を圧迫する原因となるため、肥満がある方は適度な運動を心がけ減量を試みましょう。
また、アルコールも肥満と同様に睡眠時無呼吸の危険因子です。
就寝前の少なくとも4時間前は飲酒を避けるようにしましょう。
禁煙や高血圧・脂質異常症の改善ももちろん行います。
持続気道陽圧(continuous positive airway pressure: CPAPシーパップ)療法
CPAP療法は、CPAP機器本体からエアチューブ、鼻マスクを介し設定した圧力を気道に送り、気道を常に陽圧に保つ(空気の流れを確保する)ことにより、気道の閉塞を防ぎます。
中等症以上の方の場合で健康保険の適用となります。
マウスピース
下あごを上あごよりも前方に出すように固定させることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療方法です。
主に軽症の方が適用になるケースがほとんどです。
専用のマウスピースですので、作製にあたっては専門の歯科をご紹介することになります。
中枢性無呼吸が中心の場合は原因が心疾患であることが多いため、引き続き原因を探り治療を行っていきます。
まずはご相談ください
しっかり寝ているはずなのに、眠気や疲れがとれない、という場合には、まずはご相談ください。
他にも、何度も起きてしまう、いびきがうるさいと言われる、起きたときの口の渇きが気になるなど、少しでも症状があれば受診してみるようにしましょう。
原因を探り、適切な治療や生活習慣の改善をしていきましょう。