心房細動とは
心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますが、その動きは電気信号で制御されています。
正常であれば洞結節と呼ばれる場所から電気信号が発生し、心臓の電気回路を伝わって規則正しいリズムが作られています。
心房細動は洞結節以外の場所(多くは左心房に直結している肺静脈の付け根の箇所)から高い頻度で電気信号が発生し、読んで字の如く心房が細かく動いてバラバラと不規則なリズムを作ってしまうのです。
心房細動は不整脈の一種ですが、急にポックリ逝ってしまうような危険ないわゆる致死性不整脈ではありません。
一般に3人に1人は、心房細動があっても自覚症状は出ないといわれています。
数ある不整脈の中でもよく見かける不整脈で、加齢に伴い起こりやすくなってきます。
心房細動の影響は?
危険な不整脈ではないといっても心房細動であることの問題点は大きく分けて2つあります。
心臓の症状が脳にまで影響することも
1つは脳梗塞の原因となることです。
全身を循環する血液は常に流れていないと固まってしまう性質があります。
心房が細かく動いているような状態だと、心房内で血液がよどんでしまい、血液の塊(血栓)ができてしまいます。
血栓が心臓の中だけにあれば問題はないのですが、心臓は常に血液を送り出しているので何かのはずみで血栓が心臓の外へ送り出されてしまい、脳の血管にはまり込むと血管が詰まってしまい脳梗塞となってしまいます。
心房細動が原因の脳梗塞は範囲が大きく命の危険性もあります。
仮に一命を取り留めたとしても半身麻痺や言葉が出ない等の重篤な後遺症を残すことになります。
心不全の原因になることもあります
もう1つの問題は脈が速くなる(頻脈)心房細動が続くと、心臓のポンプ機能が落ちてしまい息切れやむくみといった症状が出る心不全の原因となってしまいます。
また、脈が速くないタイプの心房細動であった場合でも、長く続くと心房が大きく拡大してくることがあります。
心房が拡大してしまうと、心室から血液の逆流を防いでくれている扉(房室弁)の立てつけが悪くなり心室から心房へ血液が逆流してきてしまい、これもまた心不全の原因となってしまいます。
生活習慣を見直してみよう
以上のように心房細動だけで心臓が止まるようなことはありませんが、重篤な合併症の原因となってしまうので治療を要することになります。
一般に心房細動は高血圧、睡眠不足・睡眠時無呼吸といった睡眠呼吸障害、アルコール多飲、ストレスなどで悪化するといわれているので、これらが背景にあるようであればまずはその改善に努めます。
脳梗塞予防が治療の大黒柱
脳梗塞を予防するためには血液を固まりにくくする抗凝固療法が必要になります。
俗にいう血液をサラサラにする薬を内服することになります。
薬物治療
このように抗凝固療法を導入し脳梗塞の予防をしたうえで、脈が速い場合は心拍数を抑える薬を内服します(レートコントロール治療)。
一方で、発作的に心房細動を起こす場合は心房細動から正常なリズム(洞調律)に戻す、あるいは心房細動を予防するための薬(抗不整脈薬)を内服することもあります(リズムコントロール治療)。
カテーテル治療
心房細動に対する根治療法として、原因となる心臓の一部をカテーテルで焼いて直すアブレーションという治療も有効です。
心房細動の原因となっている肺静脈からの異常な電気信号が左心房内へ入ってこないようにするため、肺静脈を焼灼し左心房と電気的に隔離させてしまう方法です。
当院では近隣医療機関と連携をとっていますので、ご希望に沿ってご紹介させていただきます。
さいごに
心房細動は比較的高齢者に多い不整脈ではありますが、若年~中年者にも起こりうる不整脈です。
心房細動自体の症状は動悸発作が中心ですが、脳梗塞や心不全を発症してしまうと生活の質は一気に下がってしまいます。
自覚症状がなかったとしても、たとえば健康診断などで指摘されたときはいつでも相談にいらしてください。